BtoC事業者は即刻マストドンを導入すべき
「ポストTwitter」などと言われ、10日ほど前からずっとインターネットの話題の中心になっているマストドンですが、BtoC事業者にとっては超重要なものだと思います。
既にpixivとニコニコがマストドンのサービスを開始しました。
トランプゲーム「ミリオンダウト」のアプリを運営している弊社も、先週から早速マストドンを運用しています。
これからめっちゃ流行りそうなので、簡単な解説と今後の展望などを書きます。
▲ マストドンの画面
以前、mixiっぽいものを作れる無料のソフトウェアとしてよく使われていたOpenPNEに近いです。
重要な違いは、OpenPNEのような閉じたコミュニティを作るソフトウェアと異なり、世界中のどのマストドンを利用している人でもフォローできる「リモートフォロー」機能があることです。
例えば、自分がpixivのマストドン「pawoo.net」を使っていて、友達がニコニコのマストドン「friends.nico」を使っている場合、サーバーも運営も別であるにもかかわらず、twitterのように相互フォローできます。ホームにはお互いの発言が表示され、ダイレクトメッセージ(他の人に見えないメールのような機能)も別のマストドンにリモートで届きます。お気に入りやリツイート(マストドンではブーストと言います)もリモートでできます。
つまり、自社のマストドン内で面白い話題があれば、Twitterでバズる時のようにお気に入り・ブーストされまくり、世界中のマストドンに広がっていく可能性があります。
重要なのは、Twitterと違ってマストドンは各社が自社のユーザー向けに自由に改造できることです。
ニコニコのfriends.nicoは、pixivにやや出遅れて昨日(4/19)リリースされましたが、この初動の遅さはニコニコアカウントでのログイン機能やニコる機能などを実装していたためだったことがわかりました(ニコる機能は昔ニコ動にあって滅びた「いいね!」っぽい機能です。自分はこの機能のリリース当時、ドワンゴのニコ動開発チームにエンジニアとして所属していたので、個人的に非常に懐かしかったです)。
またニコニコは先ほど、frineds.nicoのタイムラインをニコニコ風に表示するものなどもリリースしています(これに近いことはtwitterでもできますが)。
弊社も先日マストドンを改造し、メールアドレスやパスワードの登録が不要なTwitterログイン機能を実装しました。
▲ (左)通常のマストドン (右)弊社の改造マストドン「ミリドン」
弊社では今後はミリオンダウトプレイヤーが喜んでくれるような機能の実装を考えています。
まずミリオンダウトアプリからのログインは当然として、次に検討しているのはTwitterに投稿されている下記のような「ミリオンダウト棋譜」をトランプ画像に置き換えて見やすく表示する機能です。
この棋譜は、ミリオンダウトの試合展開を最初から最後まで記述したものですが、記法を理解する必要があるため、ヘビーなミリオンダウトプレイヤーしか解読できません。
(このような棋譜を出力する機能がミリオンダウトにあるわけではなく、驚くべきことにプレイヤーの皆様が記法を編み出し、手入力して下さっています)
この棋譜を弊社のマストドンに投稿した場合に、トランプ画像に置き換えて誰にでもわかるように表示する機能があれば、ミリオンダウトプレイヤーにとってはTwitterよりもマストドンのほうが圧倒的に便利になります。このような自社サービス固有の課題に対する改造がなんでも行えるところが、マストドンのTwitterに対する大きな優位性です。
1. 工数削減 2. ゲーム中でなくてもゲーム内の友達とチャットできる 3. ゲーム内の会話が外に拡散し、ユーザーを獲得できる
といったところが考えられます。
1. 工数削減 マストドンにはTwitterのような様々な機能が一通りあるので自前での実装が不要ですし、稼働実績もあるので信頼できます。マストドンにはWebブラウザでの表示だけでなく、TwitterのようにAPIがあるので、ゲームへの組み込みは難しくありません。
2. ゲーム中でなくてもゲーム内の友達とチャットできる これはPS4などのコンソールゲームやPCゲームなどで特に有効ではないかと思います。例えば、MMORPGなどで外出中にもギルドチャットに参加できるといったメリットが考えられ、ユーザーを自社のゲームのコミュニティにどっぷりと浸らせることができます。
自分は大学生の時に韓国産MMORPGに半年ほどハマって留年したことがありますが、ガチでゲームをプレイしていたのは最初の3か月ほどで、残りの3か月はゲーム内でできた友達とチャットするためのソフトと化していました。ゲームを辞めると同時にチャットも当然できなくなりましたが、もしマストドンが組み込まれていたら、その後もずっとコミュニティには残っていたかも知れません(そうなると後でそのゲームに復帰していた可能性もあります)。
3. ゲーム内の会話が外に拡散し、ユーザーを獲得できる これは従来のゲーム内チャットでは滅多になかったことです。ゲーム内のチャットで面白い会話が発生することはよくありますが、それが拡散する可能性が飛躍的に向上します。
実際にはマストドンを組み込まなくても、マストドンが準拠しているOStatusという標準に準拠したAPIを作るという方法もあると思いますが、今から作る場合はマストドンを組み込んだほうが楽ではないかと思います。
マストドンはTwitterなどと違って最初にサーバーを選ぶ必要があるところがハードルが高いという意見があり、一理あるとは思いますが、ミドルウェア的にユーザーが意識しない形で組み込まれて使われるとしたらあまり関係なさそうです。
例えば、ゲームAとゲームBを同じぐらいプレイしている太郎くんがいたとします。
ゲームAが先にマストドンを設置して、太郎くんがそこに登録し、ある程度フォロー・フォロワー関係ができあがったとします。その後ゲームBがマストドンを設置しても、太郎くんはゲームBで仲の良いプレイヤーをフォローしたい場合はゲームAのマストドンからリモートフォローできるので、ゲームBのマストドンには登録してくれない可能性が高いです。
その後、ゲームBが自社のマストドンに自社ゲームのプレイヤーが喜ぶ機能を独自に実装したとしても、太郎くんがその機能を使うことはありません。
TwitterやFacebook、LINEなどのコミュニティサービスは、Winner takes all(勝者総取り)なタイプのサービスであると言われています。
これはつまり、友達が使っていればコミュニケーションするために自分も使うし、誰も使っていなければ使っても意味がないと言うような、いわゆる「ネットワーク外部性」があるサービスだからです。似た機能を持ったサービスがいくつかあっても、一番大きいところにユーザーが全部集まっていってしまうという特徴があります。
マストドンはこのような従来のサービスと異なり、友達が他のマストドンに登録していてもリモートフォローできるので、このネットワーク外部性はかなり低下すると思います。しかし、一つのマストドンに定着してしまえば、そう簡単に他社のマストドンに移ることはないでしょう。
これは一見、他社との競争をする企業にとって不都合にも見えますが、実はそうでもありません。
わかりやすい事例は、上で書いたミリオンダウト棋譜を画像でわかりやすく見せる機能です。この機能をオープンソースにしたとしても、導入したい会社は弊社以外にないでしょう。つまり、自社サービスの顧客にとってしか意味のない機能を公開したとしても、競合他社を利するようなことはありません。
ただ、例えばニコニコの情報を最速で手に入れられるのはニコニコのマストドンになるというような状態は今後あり得るでしょう。また、Twitterには登録直後は誰もフォローしていないので何もタイムラインに表示されないという問題がありますが、マストドンではSplatoonのマストドンに行けばSplatoonの話をみんなしていますので、実はTwitterより敷居が低く一般向けかも知れません。ネタバレ防止機能などもあり、インターネットリテラシの低いユーザーにはマストドンのほうが使いやすい点もいろいろある気がしています。
そもそも、マストドンが普及した時にユーザーを取られるのはTwitterだけではないと思います。マストドンは一見Twitterに似ていますが、公開範囲が設定可能なことや、長文(500文字まで)が書けることなど、どちらかというとFacebookに似ている点も多いです。
ゲームの公式コミュニティが簡単に構築できるという観点では、カヤックのLobiのようなサービスも競合すると思います。様々なジャンルごとのマストドンが立てられていくと、2ちゃんねるなどもユーザーを奪われるでしょう。
ここ1週間ぐらいマストドンのことばっかり考えていたので、2年放置していたブログを掘り起こして、思っていたことを片っ端から詰め込んでみました。
弊社はエンジニア5人とデータアナリストのインターン1人の小さい会社ですが、マストドンの改造を依頼したいといったお話がございましたら、お気軽にご連絡下さい。
追記:貼り忘れてましたが、自分のマストドンのアカウントはこちらです!メールは hedachi(a)gmail.com です。
既にpixivとニコニコがマストドンのサービスを開始しました。
トランプゲーム「ミリオンダウト」のアプリを運営している弊社も、先週から早速マストドンを運用しています。
これからめっちゃ流行りそうなので、簡単な解説と今後の展望などを書きます。
▲ マストドンの画面
マストドンとは何か
マストドンは、Twitterみたいなものを個人や企業が設置でき、改造も自由にできる無料のソフトウェアです。以前、mixiっぽいものを作れる無料のソフトウェアとしてよく使われていたOpenPNEに近いです。
重要な違いは、OpenPNEのような閉じたコミュニティを作るソフトウェアと異なり、世界中のどのマストドンを利用している人でもフォローできる「リモートフォロー」機能があることです。
例えば、自分がpixivのマストドン「pawoo.net」を使っていて、友達がニコニコのマストドン「friends.nico」を使っている場合、サーバーも運営も別であるにもかかわらず、twitterのように相互フォローできます。ホームにはお互いの発言が表示され、ダイレクトメッセージ(他の人に見えないメールのような機能)も別のマストドンにリモートで届きます。お気に入りやリツイート(マストドンではブーストと言います)もリモートでできます。
つまり、自社のマストドン内で面白い話題があれば、Twitterでバズる時のようにお気に入り・ブーストされまくり、世界中のマストドンに広がっていく可能性があります。
マストドンがどう凄いのか
ここまではユーザーから見ればTwitterとあまり差がありません。サーバーをいろんな会社が運営しているというのは、多くの人にとってどうでもいいことです。重要なのは、Twitterと違ってマストドンは各社が自社のユーザー向けに自由に改造できることです。
ニコニコのfriends.nicoは、pixivにやや出遅れて昨日(4/19)リリースされましたが、この初動の遅さはニコニコアカウントでのログイン機能やニコる機能などを実装していたためだったことがわかりました(ニコる機能は昔ニコ動にあって滅びた「いいね!」っぽい機能です。自分はこの機能のリリース当時、ドワンゴのニコ動開発チームにエンジニアとして所属していたので、個人的に非常に懐かしかったです)。
またニコニコは先ほど、frineds.nicoのタイムラインをニコニコ風に表示するものなどもリリースしています(これに近いことはtwitterでもできますが)。
弊社も先日マストドンを改造し、メールアドレスやパスワードの登録が不要なTwitterログイン機能を実装しました。
▲ (左)通常のマストドン (右)弊社の改造マストドン「ミリドン」
弊社では今後はミリオンダウトプレイヤーが喜んでくれるような機能の実装を考えています。
まずミリオンダウトアプリからのログインは当然として、次に検討しているのはTwitterに投稿されている下記のような「ミリオンダウト棋譜」をトランプ画像に置き換えて見やすく表示する機能です。
この棋譜は、ミリオンダウトの試合展開を最初から最後まで記述したものですが、記法を理解する必要があるため、ヘビーなミリオンダウトプレイヤーしか解読できません。
(このような棋譜を出力する機能がミリオンダウトにあるわけではなく、驚くべきことにプレイヤーの皆様が記法を編み出し、手入力して下さっています)
この棋譜を弊社のマストドンに投稿した場合に、トランプ画像に置き換えて誰にでもわかるように表示する機能があれば、ミリオンダウトプレイヤーにとってはTwitterよりもマストドンのほうが圧倒的に便利になります。このような自社サービス固有の課題に対する改造がなんでも行えるところが、マストドンのTwitterに対する大きな優位性です。
オンラインゲームにマストドンを組み込む
オンラインゲームなどでユーザー同士のチャット機能、掲示板機能などは普通は独自に実装すると思いますが、今後はマストドンを組み込むという選択肢を考えてもよいと思います。どのようなメリットがあるかというと、1. 工数削減 2. ゲーム中でなくてもゲーム内の友達とチャットできる 3. ゲーム内の会話が外に拡散し、ユーザーを獲得できる
といったところが考えられます。
1. 工数削減 マストドンにはTwitterのような様々な機能が一通りあるので自前での実装が不要ですし、稼働実績もあるので信頼できます。マストドンにはWebブラウザでの表示だけでなく、TwitterのようにAPIがあるので、ゲームへの組み込みは難しくありません。
2. ゲーム中でなくてもゲーム内の友達とチャットできる これはPS4などのコンソールゲームやPCゲームなどで特に有効ではないかと思います。例えば、MMORPGなどで外出中にもギルドチャットに参加できるといったメリットが考えられ、ユーザーを自社のゲームのコミュニティにどっぷりと浸らせることができます。
自分は大学生の時に韓国産MMORPGに半年ほどハマって留年したことがありますが、ガチでゲームをプレイしていたのは最初の3か月ほどで、残りの3か月はゲーム内でできた友達とチャットするためのソフトと化していました。ゲームを辞めると同時にチャットも当然できなくなりましたが、もしマストドンが組み込まれていたら、その後もずっとコミュニティには残っていたかも知れません(そうなると後でそのゲームに復帰していた可能性もあります)。
3. ゲーム内の会話が外に拡散し、ユーザーを獲得できる これは従来のゲーム内チャットでは滅多になかったことです。ゲーム内のチャットで面白い会話が発生することはよくありますが、それが拡散する可能性が飛躍的に向上します。
実際にはマストドンを組み込まなくても、マストドンが準拠しているOStatusという標準に準拠したAPIを作るという方法もあると思いますが、今から作る場合はマストドンを組み込んだほうが楽ではないかと思います。
マストドンはTwitterなどと違って最初にサーバーを選ぶ必要があるところがハードルが高いという意見があり、一理あるとは思いますが、ミドルウェア的にユーザーが意識しない形で組み込まれて使われるとしたらあまり関係なさそうです。
なぜ「即刻導入すべき」か
重要な顧客が先に他社のマストドンに定着してしまうと、自社でマストドンを立てても利用してもらえなくなる可能性が高いからです。例えば、ゲームAとゲームBを同じぐらいプレイしている太郎くんがいたとします。
ゲームAが先にマストドンを設置して、太郎くんがそこに登録し、ある程度フォロー・フォロワー関係ができあがったとします。その後ゲームBがマストドンを設置しても、太郎くんはゲームBで仲の良いプレイヤーをフォローしたい場合はゲームAのマストドンからリモートフォローできるので、ゲームBのマストドンには登録してくれない可能性が高いです。
その後、ゲームBが自社のマストドンに自社ゲームのプレイヤーが喜ぶ機能を独自に実装したとしても、太郎くんがその機能を使うことはありません。
TwitterやFacebook、LINEなどのコミュニティサービスは、Winner takes all(勝者総取り)なタイプのサービスであると言われています。
これはつまり、友達が使っていればコミュニケーションするために自分も使うし、誰も使っていなければ使っても意味がないと言うような、いわゆる「ネットワーク外部性」があるサービスだからです。似た機能を持ったサービスがいくつかあっても、一番大きいところにユーザーが全部集まっていってしまうという特徴があります。
マストドンはこのような従来のサービスと異なり、友達が他のマストドンに登録していてもリモートフォローできるので、このネットワーク外部性はかなり低下すると思います。しかし、一つのマストドンに定着してしまえば、そう簡単に他社のマストドンに移ることはないでしょう。
マストドンのライセンスはBtoC事業者にとって都合がよい
マストドンはAGPL3.0というライセンスで配布されています。これはコードの改変を行って使用した場合、そのコードもAGPLで公開する義務があるライセンスです。つまり、自社でコストをかけて作った機能だとしても、誰でも使えるようにする必要があります。これは一見、他社との競争をする企業にとって不都合にも見えますが、実はそうでもありません。
わかりやすい事例は、上で書いたミリオンダウト棋譜を画像でわかりやすく見せる機能です。この機能をオープンソースにしたとしても、導入したい会社は弊社以外にないでしょう。つまり、自社サービスの顧客にとってしか意味のない機能を公開したとしても、競合他社を利するようなことはありません。
マストドンはTwitterを滅ぼすか
マストドンはポストTwitterと言われていますが、実際それほどTwitterと競合するものでもないと思います。Twitterが明らかにマストドンに勝っている点は検索性で、マストドンはサーバーやデータベースを各運営者がバラバラに保有する構造のため、Twitterのように全体の検索ができません。災害情報や電車遅延などの公共性の高い情報のリアルタイム性では、明らかにTwitterがマストドンより優れています。ただ、例えばニコニコの情報を最速で手に入れられるのはニコニコのマストドンになるというような状態は今後あり得るでしょう。また、Twitterには登録直後は誰もフォローしていないので何もタイムラインに表示されないという問題がありますが、マストドンではSplatoonのマストドンに行けばSplatoonの話をみんなしていますので、実はTwitterより敷居が低く一般向けかも知れません。ネタバレ防止機能などもあり、インターネットリテラシの低いユーザーにはマストドンのほうが使いやすい点もいろいろある気がしています。
そもそも、マストドンが普及した時にユーザーを取られるのはTwitterだけではないと思います。マストドンは一見Twitterに似ていますが、公開範囲が設定可能なことや、長文(500文字まで)が書けることなど、どちらかというとFacebookに似ている点も多いです。
ゲームの公式コミュニティが簡単に構築できるという観点では、カヤックのLobiのようなサービスも競合すると思います。様々なジャンルごとのマストドンが立てられていくと、2ちゃんねるなどもユーザーを奪われるでしょう。
さいごに
長文にお付き合い頂きましてありがとうございました。ここ1週間ぐらいマストドンのことばっかり考えていたので、2年放置していたブログを掘り起こして、思っていたことを片っ端から詰め込んでみました。
弊社はエンジニア5人とデータアナリストのインターン1人の小さい会社ですが、マストドンの改造を依頼したいといったお話がございましたら、お気軽にご連絡下さい。
追記:貼り忘れてましたが、自分のマストドンのアカウントはこちらです!メールは hedachi(a)gmail.com です。